ロンドン行きの飛行機の中で
大牟田の町に住んでいた事が遠い記憶になった若き日の「のら爺」バックパッカーとして海外に行くことを目指していた。一年間バイトに明け暮れバイクで全国制覇を試みていた時、浜名湖のユースホステルで何気なく手に取った本「地球の歩き方」。ページをめくっていくとヨーロッパへ自分が行くことは不可能ではないなと感じたのだった、「この本の情報をもとにバイトを頑張れはいける!」そう、ひらめいたのだ。若い人にはピンと来ないかもしれないが、当時は海外旅行などほんの一部のセレブな人々しか行かないというのが世間一般の感覚だったからだ。そしてついに手に入れたパキスタン航空の格安チケット!!
ついにこの瞬間ががきた。お金とパスポートを握りしめ(本当にお金とパスポートがあれば大体大丈、何とか行って帰ってこられると考えていたようである)友人に見送られ成田から飛び立つその離陸の瞬間、恐怖で体がフルフル震えた。日本を離れる前から想像だにつかないことに遭遇したせいでなおさら恐怖は大きくなっていた。(厳密に言えば空港内はもはや日本国内とは言い切れないが・・・。)空港利用税である!!ここの施設を使うだけでお金を払わなければならない!ショックであった、電車の駅なんて住み着いてる人もいるのに(当時はよくそんな人を見かけました)お手洗いを借りても料金はいらないはずだが、世界基準とはこんなのだろうか?この先が思いやられる。「この調子でいくと予定より大分早い帰国になるかも。」そんな予感もしてきた。
離陸してしばらくすると隣の席の外国人がボクに話しかけてきた。ウイスキーのミニチュア瓶をみせて「飲みますか?」。初めての海外しかも頼るものもない一人旅、それに出発前、皆から注意されたではないか’、見ず知らずの人に気安く物をもらったりするなと。「断るべきだ!」と一瞬は思ったがにこやかな彼の表情に、つい「ありがとう」の言葉が口をついて出た。そしてこの出会いがボクを救ってくれたのだった、英語はもちろん、出入国の際記入するカードの存在さえもしらないボク、右も左も分からず路頭に迷うはずだったボクに起きた最初の奇跡だったのです。
彼Mr’オーウェンはたしか海外青年協力隊の仕事で日本に来ていた、奥さんは日本人でアメリカ人の彼は日本語がとても上手。そしてなぜかこんな行きずりの日本人ボクにとても親切にしてくれた。飛行機はマニラ、バンコク、カラチ、もう一つはどこだっけ?最後にエジプトを経由しロンドンにつく。カラチでは6時間ものトランジット、だが、あそこでの朝日は今でも、魂に焼き付いているオレンジ色でとても、でっかい!!。この長い旅路、オーウェンさん、スティーブさんと関わりを持てたことで何とか乗り切り、入国審査までたどり着けた。不安そうにしていたボクにオーウェンさんは付き添ってまでくれたのだった。
そしてやっとロンドンにたどり着いたボクにオーウェンさんはこう言います。「少し勉強してから出発しなさい、私が留学している大学の寮にビジターとして滞在できるから」
本当にありがたい話でした、たまたま飛行機で隣になっただけの人が日本語を流暢に話し最初の目的地で宿泊先まで紹介してくれたのですから。これはまさしく奇跡というのでしょう。